『折能力』

彼の名は「オリ・ゲラー」。世界でも指折りの「折能力者」だ。
壇上の彼は今、一枚の紙に念を送っている。
これから彼は「はさみ」も「のり」も使わずに
紙を動物に変える「紙折り」を行うのだ。


断っておくが、私は「折能力」なんて物を信じていない。
「紙折り」にしたところで、
どこかのタイミングで「はさみ」の入った物とすり替えているか、
力任せに曲げたり潰したりで内部に「破れ」があるインチキだと思っている。


壇上の彼は未だ、一枚の紙に念を送り続けている。


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10分程経過したが、紙は正方形のままだった。
変わったのは彼の顔色で、額には冷や汗を浮かべていた。


彼はやにわに立ち上がると、悲壮感を漂わせながら、要約すると
「観客の中に自分の力を疑う者がいて、念を込める障害になっている」
といった内容の口上をまくし立て、舞台の袖に消えて行った。